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翻訳会社で15年以上さまざまな業務を担当してきた筆者が、業界の最新の事情などについて思うところを書いていきます。
SNSの翻訳??(その2)
(前回から続く)

前回、トヨタ自動車が「SNS翻訳センター」というものを設置したというニュースをご紹介しました。
わたしがこの記事を興味深く読んだ理由が 2 つあります。

ひとつは、この翻訳分野は、マニュアル、仕様書、契約書、ヘルプではなく SNS、つまり瞬時にやり取りがなされる形態のコミュニケーションの翻訳であること。

そしてふたつ目は、日本人が「国際標準語」である英語で SNS を行うのではなく「日本語」で行うことを前提として、英語の話者との間に「翻訳」を介在させていることです。

これまでは日本人の「国際化」の課題として、英語を学んで上達し英語で海外の支社、協力会社、またはクライアントとのコミュニケーションを図らねばならない、というものでした。

しかし今回のトヨタの試みは「日本人は英語が上手にならなければならない」という決まり文句的なところを「卒業」しているという点で非常に痛快です。

わたしも経験がありますが、英語での文章作成、メールでのやりとりは日本語と比べかなり時間がかかりますし、できれば誰かが代行して日本語で作成した文書を英語に訳してくれればもっと別の重要なことに時間を費やせるのに、と思っていました。

不必要に英語でのコミュニケーションに四苦八苦して時間を費やすよりも、日本語→英語の変換は、ツールなりシステムなり専門家に任せて、もっとアイデアとかエンジニアリングといった専門分野に時間を費やすほうが得策だ、とトヨタは判断したのだ、と推測します。

また、日本語と英語は文法的にも全く異なる言語であるため、英語と欧州言語のような親和性が少なく、日本人による、英語でのコミュニケーションが一筋縄ではいかないということも理解していると思います。

「SNS翻訳センター」には専門のオペレーターがいるそうなので、この分野で採用される人材もいるわけで、翻訳業界にとっては朗報と言えるかと思います。

今後、翻訳業界にとっては、海外にビジネスを行うが、英語でのコミュニケーションは最小限にしたい、という会社にサービスを提供するビジネスモデルの可能性が出てくるのではないかとわたしは推察しています。

SNS のように瞬時の双方向コミュケーションの翻訳メソッドを確立するのは大変ですが、たとえば、製品のファンクショナリティー(機能)テストを海外で行い、そのフィードバックやバグレポートをメールベース、エクセルベースで英語で受け取り、翻訳者が介在して英語を日本語に訳したものを日本に送る、という会社もあります。

誰もかれもが英語が得意なわけではありません。現在の日本での英語教育では、バイリンガルになれないのは明らかです。特に理系のエンジニアの方々は、英語よりも(英語に煩わされずに)専門分野で能力を発揮したいと思うはずです。そのような分野でお手伝いするのも翻訳業界の役割だとわたしは思います。
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